雨の日に「今から傘を買いに行くんだ」と彼は言った。 当然返ってくる返事は無い。 なにせ今は雨が降ってる。 「雨が降っているんだ。だから傘を買いに行くんだ。」 と彼は言った。 雨音だけが静かに窓から滑り込む。 「わかったよ。そこまで言うんだったら一人で行ってくるよ。」 彼はドアを思い切り開けて傘を買いに行った―――――。 「というわけで、僕らはこれから彼を探さないといけない。」 佐藤君は皆を集めた。 「彼は傘を買いに行ったために、傘を持っては行かなかったようだ。」 「今頃ずぶ濡れと言うわけか。」 と加藤君は言った。 「早く探さないと。明日大学の試験なのよ彼。」 と伊藤さんは言った。 隣で阿藤さんも頷いた。 「おそらく表参道の少し路地に入った無印にいるはずだ。」 「彼お金無いもんね。」 三藤君が言った。 「だったらコンビニのビニール傘を買いに行くんじゃない?」 と武藤さんが言った。 「無理無理。彼ビニール恐怖症だもの。観るのだけでも嫌なんですって。」 と古藤さんが言った。 「大変ねぇ。」 と工藤さんが言った。 そして、それぞれ自分のお気に入りの傘を持って、ヒマつぶしに出かけた。 |